13 火振り神事「御前迎えの話」
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13 火振り神事「御前迎えの話」

 毎年三月二十日前後1阿蘇神社三の宮・年称(としね)の神は、お嫁さんを迎えるのです。

  春祭りの申(さる)の日には、御前迎えといって、お嫁さんを赤水の・吉松神社南の山(宮山・乙姫山・鏡山・鷹山等ともいう)からおつれする事になっています。

 その日の朝、阿蘇神社から神主さんと若者たち五・六人で迎えに行くのですが、目かくしをした神主さんが林の中の樫の木を手で探しあてます。最初、手にふれた枝がお嫁さんとされていました。真綿で包まれた花嫁のご神体は、神主や若者達に守られて、浜神社、横道、渋川、蔵原、竹原を経て宮地に向かいます。とちゅう、それぞれの場所で決められた儀式がありますが、西町の薬師堂では花嫁であるご神体にカシの葉をかざり、ひえの御飯をさしあげるのです。

 宮地に入ると、塩井川で身を清め、白粉原では米の粉の白粉でおしゃれをします。

 辺りがうす暗くなった宮地の町中では、人々がおもいおもいに手にしたカヤを束ねた松明に火をつけて一行の到着を今か今かと待ち受けています。カヤの松明が打ち振られ、阿蘇神社の楼門が闇の中におごそかに浮かび上がるとやがて、花嫁行列がしずしずと松明の光の輪と輪の聞を抜けて行きます。 阿蘇神社での婚姻の式が終わると御輿にのり町なかを抜けて、こうべんどいで左弓を二矢放ちます。川辺というところです。左弓の意味はよく分かりません。

 三の宮の前を通るときには行列の一行の者、一言も言葉をかわしてはならぬと言われており物音も立てず静かに静かに通りすぎて行きます。 阿蘇神社・三の宮・年祢の神と花嫁御前はこうして結ばれる運びとなるのです。 年称の神は彦八井命また草部吉見神、国龍神ともいい、農家にとって一番大切なお米の神様とされています。吉松宮には年称の神、比東芬q神(ひめみこのかみ)が祭られています。

 註 「型別迎え−火振り神事」は羽衣伝説との関連があるともいいます。

  羽衣をかくして天女を妻とした新彦神が、後に天に帰った妻のことが忘れられず、毎年宮山に妻の面影を求めて行う神婚の儀式が、御前迎えの神事というのです。

 しかし、この祭りは正しくは、国龍神の神婚の儀式として行われており伝説との食い違いが出てきます。

 御前迎えの二汀は、帰り宮山から浜神社に立ち寄るのですが、ここは国龍神の御子、新彦神が祭神となっています。


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