民話 16〜20
ホーム • 上へ 

 


 

16

焼いたつがええ

17

ととさんの土産

18

運のよい猟師

19

猟師の天昇り

20

たぜんさんの鴨捕り

 

16 焼いたつがええ 

 

一の宮町宮地 北窓正一

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

頭のいい男がおったでしょうな。自分のうちい火事があって、奥さんが焼け死んだ訳ですな。そっだもんだから、毎日毎日「嫁ごが死んだ。嫁ごが死んだ」ちゆうて、もう泣きよった訳ですな。

「まあ、そぎやん泣かんでええ、またおなごはどしこでんあるじや。」

「あげなおなごはもう他にやおらんけ、あげな嫁ごでなかにや、つまらん」 てえですたい。

「いやいや、あのこの前焼け死んだつによう似たつば探して来るけん。」

「いや煮たつよりも、焼いたつがええ」て言うたそうですたい。

 

17 ととさんの土産  

一の宮町宮地 岩永 寿

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

子供の作文ちゆう話がありますが、お父さんが久しぶりに東京から帰って来ました。何んの土産だろうかと思って見たとこが、私には機関車のお土産でした。妹にはゴムまりでした。お母さんにはお土産は何もありませんでした。お母さんはかわいそうだなあと思っておると、「良い子は早う寝るんだよ」 っと言いますので、私達は喜んでお土産の機関車とゴムまりを枕元に置いてやすみました。しばらくすると、お母さんに、 「足を上げなさい。足を上げなさい」 と言うので、 「ははあ、お母さんには足袋のお土産かなあ」と思いました。

「もう行くよ、もう行くよ」と言いますので、また行くかと思うと、

私は淋しゅうございました。

 

18   運のよい猟師 一の宮町宮地岩永寿

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

猟師さんが鴨打ちい行ったところが、田の畦にちっとこう曲がった畦に、鴨が十二、三羽こうやって止まっとる。

「よーし、こればいっぺんに射っとにや、どがんしたら良かろうか。曲がっとるけん、鉄砲ば曲げちょったら良かろう」ちゆうとばってん、鉄砲をちつとつん曲げて、畦ん形い鉄砲構えてから射ったところが、弾やかあきゆうと曲がって、畦に十二、三羽おった鴨が全部こつちから向こうまで死んでしもうた。ところが、そん弾んやつがまだその十二、三羽を突き抜け、先い行って山におったところの兎い行って当たった。兎の尻当たったもんだけ、兎がたまがってから前足でバタバタ、バタバタ

やって、その前ん土ば堀りよったところが、そん掘った所に山芋が一杯出て来て、それでその猟師さんな鴨ば十二、三羽、兎一匹と山芋ぱ一貫目ばかり肩にかついで帰りよったとこが、その橋がなかもんだけん、川ん中ば入って帰らにやならん。で、尻ば引っからげち、川ん中に入ったとこが、底がちいっと深うして、そして胸んちかくまじ、その川水に浸かって、それをやっさで向こう岸まで這い上がってみたとこが、何んさま、その股座んとこがムズムズする。何じゃろかと思ちから、こうやって広げち見たところが、泥鰌んやつが一杯、五合ばかり入っとった。そって、そん泥鰌も皆これもついでに持って帰ろうち、一発の弾で鴨を十二、三羽、兎一匹、山芋一貫目、泥鯰が五合ばかり取れたちゆう話たい。

 

19 猟師の天昇り

 

鴨取り行って、冬の寒か時に鴨は足が全部氷に凍り付いてしもうて、パタパタ、パタパタ動けんとば、「早う、つかめにやならん」ちゆうとこで、全部足ばくくりつけえちから、そして、自分の体にそお結い付けとったところが、日が東の方から上って氷が解けたもんだけ、いっぺんに鴨が飛び立ったんだで、あらあらちゆう間に自分の体は宙に浮いてしもうて天さに、鴨に引き上げられ、「おりやどこさに行きよるじやろか」ち。その鴨捕った人がいっぺん

に西町の上の、「俺がどこじやろか」言いよったとこが、我が家ん庭に降りたとか何とかいう、そぎやあな話だったですな。

 

20 たぜんさんの鴨捕り

一の宮町宮地 後藤一義

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

 

ずうつと田の畦ぐろに、こう鴨がついちょるけ、どがあして挿ろかと思うたが、どうしてん曲がっちょるけ、どでんこでん捕られん。そいで鉄砲をふん曲げちいち、鴨を撃った。たぜんさんがその鴨をみんな捕ったちゆうこった。


ホーム • 上へ