民話 21〜25
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21

呑まにやはなせん

22

石臼は蜘蛛の巣に

23

坊さんとつけあみ

24

彦しゃんの傘

25

彦しゃんの天昇り

21 呑まにやはなせん 

      一の宮町宮地 後藤一義

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

たぜんさんちゆうがおらしたちゆうが、なかなかそん頓知のある、そま何言う、その噺家みたような、なかなか頓知、頓才でな、そんたぜんさんがな、阿蘇家たいな、阿蘇家ん宮司が、 「たぜんの話はよかなよう」言うて、たぜんが話を聞く。そっからたぜんさんぽ呼んで、そっから行て、ま、挨拶どんして、何したら、 「たぜんよ、おりやお前が話を聞こうと思たっち。」 「はあい、そりやもう承知でござんす。ばってんもうし、ま、ここん門のな蛇はそのうワクドをくわえちょるけ、『放さんか、放さんか』言うばってん、『飲まにゃ放さん』ちつちや言いました。」

「成る程、お前は酒好きじやったけ」ち言って。それから酒ぱ飲まして、ま、その話をさせたっていうことです。

 

22 石臼は蜘蛛の巣に

 

一の宮町宮地 後藤一義

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

何かそん石臼が棟まで引つ掛かつちょったろん。何んだろん言わって、そのたぜんさんが妹さんが、良かきな粉摺らにやん言いよるけ、 「石臼さあ、石臼あどけえあるか」言うたら、 「ああ、さっきから風が吹いて、吹き上げてから、どつか素ん蜘蛛の巣に引っ掛かっちょるばい。」

「ばあかが、何ちゆうこつ言うか」 って妹さんが怒らした。

「何を言うか。」

「ああん、さっきからの風が吹いた時、吹き上げてから裏ん蜘蛛ん巣に引つ掛かつちょるがな」ちゆうて、たぜんさんな言いよった。(四九二法螺吹き童児)

 

23 坊さんとつけあみ

一の宮町宮地 宮川 進

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

昔むかし阿蘇ん山ん中ん古か寺に坊さんがおったったい。そこには小坊主が二、三人おって、その坊さんは大変つけあみ好きで、つけあみを見るともう目も口もないようなお坊さんじやつた。ところが、つけあみちゆうのが非常にそん当時は大切な阿蘇ん山ん中じや非常なおご馳走じやった。そこで、だっでんかつでんにや食べさせられん大変大切なつけあみじゃった。そいで、そのお坊さんはつけあみを食おうと思う時は、 「おい、小僧坊主共は、あんたたちやあお御堂で掃除ばせなんたい」と小坊主さん達をお堂にやり、掃除をしとる間にこつそり戸棚からつけあみを出して、それをにこにこしながら少しずつ食うておりました。ところが、小坊主さん達が、 「今おじゆつさんな、何んぼしょんなはるじやろか」と、こつそり見ると、にこにこしてつけあみば食いよるもんだけ、

「あんつけあみば食いちやなあ、食いちやなあ」と小坊主達はいつも思ってちょりました。ところがある日のこと、おじゅっつあんが町の方に買い物に出て行った。その留守に、 「今、あんつけあみば食おうぜ、あれを」 と小坊主二人はこつそりと戸棚を引き開けち、そしてつけあみば出あて、食べちみると、やっぱおやめられんな。とうとう、つけあみば殆ど食てしもうた。ところがハッと気付いた時に、 「こりや、帰ったら怒られるばい」ち、ええまあそういうことで、 「どしたら良かろうか。」

「ん、そんにやお、良か知恵があるぞ。丁度あのお御堂の仏さんの口の所につけあみぱ塗っとこじやねえか。そいて、仏さんがつけあみば食たと言おうじやねえかぞ」ち。で、この坊さんが帰って来てみると、案の定つけあみがのうなつとるので、 「つけあみぱどぎやんしたか。」

「ああの、何んかことこと言うちから、ええ、お御堂さんが出て、戸棚ぱ開けよんなったですばい。」

それから、

「そぎやんこつがあるもんか」ち。

「んなら、あのお御堂に行ってごらん。仏さんの口にやつけあみがついとるはずじゃが。」

そっで、お坊さんはお御堂の方へ行って見ると、案の定、仏さんの口につけあみばついとんので、

「こりや仏さんがつけあみ食ったっじやろうか」ちゆうち、仏さんを庭に投げつけると、仏さんは

「クワン、クワン」ち音を立てち、食うてないと言う。

「口の廻りにつけあみがついちょるけえ、食った証拠ははっきりしちょる。何んの食わんこつがあるもんか。んにや、確かに食いよんなった。」

それから、 「食うておるか食うてないか、おじゅっつあんいっちょう、あの仏さんばたしなめてみなはり。」 それで何遍も聞くけれど、仏さん黙って何んとん、うんとんすっとん

 

24 彦しゃんの傘

 

一の宮町宮地 岩永 寿

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

彦しゃん(彦一)が、「あたしゃ、すばらしい傘ば持っとる」ち

「天気のええ時や独りでにこうつぼまる、天気の悪い時や独りでにこぅやってパーツと開く。そういう傘を持っとるです。」

そればあつちこつち言いふらしたもんだけん、マツイの殿さんな、 「そぐあん珍しか傘があんなら、いっちょうわけちもらおう」ち。で、彦一つあんをお城に呼んで、 「ああた、えらいその素晴らしい良か傘を持っとるちゆうね。天気の良か時やつぼまる。雨が降る時や独りでに開く」ち。それから、 「はい、その傘はああた、生きとるけん、もう必ず天気の良けりや独りでに、パッとこうすぼまりますたい。」 「そぎやん素晴らしか傘があんなら、俺いっちょわけちくれい」ち。

「はい、そらうんと金ば貰うなら、わけてあげてんよございます。」 それから殿さんが、「んなら、いっちょ。」

何両か金ばそのやって、してそれば傘ば置いた。ところが、殿さんがこうつと見とるばってん、雨降ったちや、天気が良かったちや、こうそのつぼまりやせん。それから彦しゃんば呼んで、 「あクや普通ん傘じゃったぞ。天気が良かったちや、雨降ったちや、いつも靡きもつぼみもせん。」

「あらら、そりや、あん傘は生きとるとば、何んにも食べささだったな。とぅとうあげえ、傘死んでしもうた。可哀想なことをした」ち言うたそう卑(五六五 生き絵)

 

25 彦しゃんの天昇り  

一の宮町宮地 岩永 寿

( 出典:関西外国語大学 三原研究室 阿蘇山麓の口承説話より)

 

遊んでばかりおってから、田ん圃のかげがでけん時に、彦しゃんの天昇り、田の真ん中に竹ば立てちか、 「俺、今から天に昇ってみする」 ち、で、もう近所の人がずうつと田ん圃におって、田ん園ば水ば入れて、こう人が集まった。すかんでいいんはその人が集まる。その真ん中に竹を立てちから、中途まで登って、降りて、そん時は田ん圃は田植えていいごつ下が椅麓んなっとる。それへ田植えたちゆう話ですな。(五七玉 音五の天昇り)


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