7 ことわざ
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7 ことわざ

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A 阿蘇の天候に関したいわれ

B 農事気象の俚諺

 

C 俗信(唱えごと)

 

阿蘇のことわざ

 ◇ 特に阿蘇地方中心のもの生活の中から生まれ、現在も使われているもの

  (1) ことわざ

阿蘇の諺

意味

犬のくその高あがり

犬は草の葉の上にウンコをする。身分不相応なことをいう

こしょうの丸呑み

胡椒は丸呑みすれば辛さが分からぬ、何事もよく理解しないこと

親ん意見となすびの花は千に一つのアダがない

なすびの花は全部実になる。親の意見も無駄がない

おじいもんの見てえもん

怖い物は隠れてでも見たい

出もの腫れもの所きらわず

おできはどこにでも出る、何時どこで何が起きるかわからない

雑炊のそえもん

雑炊は」おかずはいらないがあってもなくてもよい、どうでもよい事の意

馬鹿のいっちょおぼえ

一つ事を絶対覚えて忘れないこと

甘えならひん飲め辛れなら吐き出せ

物事に当たって見て、楽な事なら浮け入れ、悪い事は受け入れない

向こう脛にゃノミも這わすな

向こう脛はnノミが這っても痛い所だ、用心しなさい

たぼいもんの谷こやし

大事なものを食べないで取っておくと腐ってしまって肥やしになる、早く食べたがよい

刃金をかむ

どんなつらい事でもしっかり立ち向かえ

後んカラスが先になる

うっかりしていると後のカラスに追い越される

姉さん女房は身代ふやす

年の多い奥さんはがっちりと金貯める、良い嫁さん

今泣いたカラスがもう笑うた

物事の切り替えが早いこと

内弁慶の外なめくじ

家の中では元気者だが外の人の中では何も言えない人のこと

三度の飯もこわし柔かし

毎日あ炊くご飯も固かったり柔らかかったり、世の中は思うようにはいかぬ

総領の十五は貧乏の世盛り

一番上の子が十五歳の時は下の子たちも小さくて手がかかり金がいる

煮てん焼いてん食われん

どうにも手に負えない頑固者のこと

火のねえところにゃ煙は立たん

何か原因があるから噂がたつ

先手出しゃ万手出す

先に何かをすれば相手は何倍もの仕返しをする

朝雷と女の腕まくりや怖くない

朝鳴る雷はすぐに止む、女が腕まくりしても怖くない

ひだり腹にめし

ひもじい時ご飯を喰えばなおるが、世の中そうはいかない

逢うた時笠はずし

めったに逢わない人に出会ったら笠をはずして丁寧に挨拶する、めったに食べられない物はゆっくり食べよう

余らず足らず子3人

三人位の子が一番育てやすい、丁度よい

竹の子ん親まさり

竹の子は親竹を追い越す、人の子も親より偉くなること

立っちょる親使い

自分は坐っていて取りたい物の側に親がいたら親でも使う。すまない気持ち

なむると口けがする

人を安く見ると とんでもないことになる

二度あることは三度ある

同じ事が二度あると、もう一度必ずある、用心を

手野のおんだは夕立おんだ

7月26日 手野の国造神社のお祭りには必ず夕立がくる

阿蘇谷の夫婦火事

阿蘇谷のどこかに火事があると必ずもう一つ火事がある。用心を

桃栗三年柿八年柚子(ゆのす)のゲドやっあ十八年

桃、栗は3年で、柿は8年で実がなるが柚子は18年もかかる

桜切る馬鹿、梅切らん馬鹿

桜は切らないほうがいい、梅は切った方がよい

奥歯にものんはさまったごつ

何か意味ありげなものを言うこと

 

 

 

(2)農事 、気象に関する言い伝え

 

阿蘇の天候に関したいわれ

意味 内容

三月の忘れ雪

3月暖かくなったのに、ひょっこり寒さが戻って降る雪のこと

暑さ寒さも彼岸まで

暑いのも秋の彼岸まで、寒いのも春の彼岸まで。気候の目安をいう。

根子岳夕立ちゃ屁もひりあわせん

根子岳が曇ったら急に夕立が来るという戒め

夏と冬、一緒にに来たか阿蘇んじょ

浴衣の上に綿入れ袖なしを着たりする、阿蘇の天候の変化を言ったもの

阿蘇山の煙がこっち(阿蘇谷)の方に降りて来たら雨になる

阿蘇山の煙で天気予報をした

阿蘇ん夕立ちゃ馬ん背も降り分ける

馬の背中の向こうは降っても手前は降らない。雨の群れ降りの様子

夏の夕焼け大水の元

夏の夕焼けは大雨になるという天気予報

秋の夕焼け鎌をとげ

晴れるから稲刈りができる

月に虹の輪(傘をかぶる)が出来たら翌日は雨が降る

月に輪がでたら明日は雨という天気予報

神経痛が痛むと翌日は雨に務ああなる又はアカギレが痛む

神経痛の痛みや、アカギレの痛みで天気予報をした

東風と一人婿はただじゃ来ん

東風は雨を持って来る、一人婿は財産が目当で来る

継子の洗濯日和

大雪の翌日は晴れる

ひぐらし啼いたら梅雨あがる

ひぐらしも天気予報になる

雲仙腰巻、阿蘇頭巾

雲仙嶽の裾野に雲がかかり、阿蘇山の頂上に帽子をかぶったように雲がかかったら、かぶるものを用意するとよい

三石日和(さんごくびより)

振ろうごと(五斗)降るめえごと(五斗)じっとして(十斗)、ごとごとふりだす((五斗)(五斗)じわじわと降りだす天気予報

 

 

(3)農事・気象の俚諺・諺

項目

内容・説明

八幡園の耳取風

宮地の出口から塩塚までの間(北からの冷たい風)

一の御田の耳取風

一の御田を出て古城ヶ鼻までの間(北からの冷たい風)

立野のまつぼり風

 

小寒の雪が大寒にとける

 

二月の寒戻り

二月は逃げる、逆現象

三月の忘れ雪

冬の名残、野焼きが始まる

四月のサド倒し

サドはサトガラ、折角伸びかかっていたサドが寒にやられる

柿の葉三枚 ごぼう抜き

 

こぶしの花に芋植えよ

 

乙姫の祭りに種もみ計ってまけ

 

こぶしの花は苗代時

かって宮地駅前にはこぶしの大樹があった。

八十八夜の別れ霜

 

苗代寒合

 

夫婦二人口ならわらびは年中ある

かっては鎌で刈るほどのわらび驚くべき多さであった

臥牛起馬

あたりまえのこと

牛の朝飼い馬の夜飼い

農家では牛馬を大切にする

馬やが栄えにゃ本家も栄えん

農家では牛馬を大切にする

麦は蒔きしほ百日、刈りしほ三日

 

里芋は田植え歌聞かにゃ芽が出ぬ

 

長雨にへこたれる

 

すがるの空が明るうならにゃ長瀬(長雨、または梅雨)やまぬ

 

煙が南は晴れ、北は雨

農民は中岳の煙で気象を予知した

雲仙腰巻 阿蘇頭巾

 

根子岳夕立ちゃ屁もひり合わせん

洗濯物は早く入れないと

北山夕立ちゃ音ばかり

宮地は音ばかりで雨は降らない

うどんやハガマは湯あかり

 

手野の御田は夕立御田

不思議と雨が降った

御田が来たら人参植え

726

半夏至に豆植え

 

八月ただれは蔵たつる

稲の生育には日照

九月大名

農家では腰をのばして入湯に行く

牛と馬とは片身代

 

霜宮祭りにたかなを植えよ

 

古神さんにタカナ植え

10月13日から20日

阿蘇谷のばんびゅう風

はげしい風

初亥に蒔けば稗(ヒエ)つくり

旧暦10月亥の日、亥の子

中亥に蒔けば実つくり

稲の生育を守ってくれた

後亥い蒔けば花つくり

ソバの植えときでもある 田の神に感謝

十月の小六月、秋日のあくた蝿

暑さぶりかえす 秋日にはうるさいように蝿が出る

亥の子が来たらコタツを立てる

 

亥の子に大根引き

 

阿蘇谷の夫婦火事

一軒焼けたら、必ず又一軒焼ける「火の用心、火の用心、」

 

 

*参考文献 北田 正三著 「阿蘇」

 

        教育委員会「故郷の方言」

 

        その他 採取者 嘉悦 渉

 

 

 

 

(4)俗 信

 

昭和八年(一九三三)調査

肥後国 阿蘇郡俗借(唱えごと)採取記録

採取者 八木 三二 氏(大阪)

採取地 (宮地町・坂梨村・古城村・中通村ほか)

         

平成十三年十二月十日(2001)

民俗関係史調査

一の宮町教育委員会

 

肥後国阿蘇郡俗信 (唱えごと)誌調査について

         一の宮町教育委員会

      嘉悦 渉

 

 肥後国阿蘇郡俗信誌は、大阪府八木三二氏によって採取記録されたものである。氏は昭和ハ年(1932 )ごろ阿蘇郡に来り各町村を巡回、またその町や村の古老に会い約四十項目にわたり綿密に調査採取記録されたものである。標題は、阿蘇郡俗信誌となっているが郡内でも特に一の宮町を中心に調査されていることは実に興味深く、また、有難いことであった。

 氏は、昔から大事に伝承されてきた、こうした、俗信(唱えごと)は、近代文化の発達により歴史の彼方に消えゆくであろうことを想定してはるばる大阪から阿蘇に来り研究してその一首一句のことだまの呪力が氏の感概を強くし、心を揺り動かしたと思われる。

 平成の現代当町においてもこの俗信は全くといっていい程に死語と化しつつある。筆者が幼少のころ(昭和初期)不測のことがおこった場合父母がお年寄りがこうした唱えごとをして大事に至らぬように天地にお祈りお願いしてもらったことを懐かしく憶う。その唱えごとにより、不思議とその大事からのがれたような安心感が漂うのを覚えたものである。

 こうした記録は町にも殆ど見当たらなかったが、一の宮町町史編纂史料収集調査中発見したもので貴重な記録としてまとめたものである。なお、文中当地の方言と思われる表現が見受けられるが、氏が大阪府出身である為方言の受け取りが若干不自然と思われる点も見受けられるが当然のことであろう。

 氏の俗信に対する深い造詣と執念にも似た採取の努力に対し心から深甚の意を表したい。

 

肥後国阿蘇郡俗信(唱えごと)採取

    一の宮町(宮地町・坂梨村・古城村・中通村)

唱えごとは一般に 「うたよみ」との言葉ではあるが必ずしも三十一文字ではない。

 

1、何かの際「こん歌で理詰めにします」タイ

  (宮地町字石田佐伯猪熊(六七才) の言葉)

2、 このうたよみを行う時の儀法としては

  古城村・坂梨村では必ずこの呪歌・呪句?を三度唱えて最後にアブラウン(又はオン)ケンソウカとの真言を加え、口より息をフツフツと出して吹っかける。

   以下この唱え言を適宣分類して記す。

 

(イ)衣に関するもの

、阿蘇では 「寅と八日にもの裁つな袖に涙あふる。」との俚諺がある、その日を忌しんで 「酉の羽重」  とて酉の日を選ぶが(但し、織を織り上げた日はたとえ、いかなる日でも物忌みしない)是非このもの裁ちの悪い日において布を裁たんとすれば次のうたよみをして裁てば、その難をのがる。

 佐保姫の教へ始し唐衣時をも日をもいとはぎりけり。(宮地町 古神)

二、着物を昔ながら、そのほころびや、破れをつづくる時、又物差しではかる時には、次のうたよみをする

山田ン肝入殿の?子が死なしたきり、早よして、行にゃ、遅くなる。

(宮地町 必ず三度唱える) 又 (坂梨村では、一度唱える処もある。)

  山田ン肝入殿の?子が死なしたきあ、せわし。(黒川村坊中)

 小鳥や小鳥や鳥が(な?)着物着て着物きながら縫うぞめでたき。(宮地町)

三、縫れた糸を解くときに詠むうたよに

  いそがしやいそがしや磯辺の石に腰かけて、心いそがし、糸をとるなり。(産山村田尻

 いそがしやいそがしや磯辺の石に腰かけて、心静かに糸をとくべし(内牧町駄原)

 いそいそと磯辺の石に腰かけて糸を解くなり(内牧下町)

  「糸が繰れて心くやしき」を三度。(宮地町下町)

 

(ロ) 動物に関するもの

四、便所で時鳥(ホトトギス・タンタンタケジョ)の啼き声を聴くと、必ず大いたみする(大病になる)が死ぬるかなどの難があるがそれをのがれる為に

ほととぎす今日は初音と思うなよ昨日もきいた今日の古声。 (宮地町塩井川・黒川村乙姫)

  ほととぎす今日は初音と思うなよ聞き、知りきいた今日の古声 (宮地町古屋)

  ホケキョヨわれは初音と思うかや、昨日も聞けば今日の古声 (古城付北坂梨)

  又初時鳥の声を聴くのを忌むがそれを避け為にこの歌詠みをすれば、その年の難をのがる。

  又初音を座して聞けば其の年は楽に暮らされ寝て聞くと、其の年病多く、便所で聞くのが一番悪いとされる。(宮地町古屋)

五、闇夜に鳥噂きを聞けば、何かの悪難その一身に降りかかるといわれるが、この難をさくるために次の 歌を三度詠めばよろしと。

  闇夜鳥のなく声(なく時ともいう)きけば月夜鳥はいつもなく。(宮地町石田)

  闇夜鳥の声聴かず月夜鳥はいつもなく。(宮地町古屋)

、時に正月また、夜の明け前に鳥の暗声を聞いた時の歌詠みに

  闇の夜になかぬ鳥の声きけば生まれぬさきの父ぞ恋しき。とよんでその難をのがる。

(長水村赤水)

七、道を歩いている時イタチが横切ると、その道を行くのを避けねばならぬが、捨て置けぬ用事のあると遮二無二通らねばならぬ時に次のうた詠みを三度なせばその難をのがる。

  いたち道きり、ちみちぎりわれはそち行け俺はこち行く。(宮地町石田)

  いたち道、血道、横道、曲り道そっついけ俺はこう行く (中通村原口)

  ふみわけていたちは死する、俺は繁生 (黒川村西町・蔵原)

ハ、 又、イタチが横切るとき右から左へ切るのは何事も災厄が起こらぬが左から右に切った時は、

いたち道、血道、横道、近い道、我が行く先は、黄金花咲く。と三度唱えればその日の難はのがれる。

  又、蛇の場合も同様である。(宮地町古屋)

  蛇の場合には (古城村北坂梨村にては)

  蛇道切り血道切り、我が切れば、俺も切る と三度唱えアブラモンケンソウカとも言う

  山に行く時、蛇に逢わぬように、又真蛇より食いつかれぬように

  ちりふ (池鯉鮒)大明神と三遍唱えて行く (中通村春口)

  東山甲佐が滝のかぎわらび忘れたか蛇忘れぬか蛇(三編唱える)

  すれば蛇の方から退却する、これは蛇が「ドグロ」をまいた真中をわらびが突通って出ていたのをとって助けたのによる (黒川村坊中)

  東窓(   )甲佐の滝のかぎわらび昔の恩忘れるるな(三編唱えてアブラウンケンソウカの御真

  言を唱え このジュ一匹の蛇がその頭に杙(くい)がささっていた。その杙は地までぬかっていた。丁度その地の下から蕨ががぎをもたげて生へ延杙がぬけて、蛇は生命を拾ったと、言うことに、由来するのである。

 又、ここに起因して野や山に出て、真蛇に噛まれぬように一番蕨をばとり、足や手につけるのである。

 又、蛇に逢ってその蛇を除ける唱えごとに

  盲蛇やどけどけさね馬飛ばするぞと言えばすぐのくる (古城村東宇野)

  盲蛇どけどけ梶原の源太が通るぞ当宮地町に梶原屋敷とて源太が奇跡を伝えるものあり。

(古城村、 北坂梨)

十一 馬ん虫がせくとき即ち腹に虫が湧いてそれに苦しめられる時に

  大阪の八坂の坂中で虚無僧に逢って鯖三匹盲うてこの虫早せきやませ

  と唱えて笹の葉でその腹をば撫でその笹の葉を食わすればせき止むと言う。(古城村北坂梨)

 

(ハ) 身体に関するもの

十二 子供が何かに頭をうちつけた時。

 アブラモンケンソアカ、チョチョラチヨットヨーナシ。と唱えて撫でるとよい。(宮地町石田)

 アブラモンケン、蕎麦(ソバ)猫、八幡大菩薩と三度なで、フツフツと息をふきつける(宮地町・

    黒川村・坊中・内牧)

十三 しびれの切れた時は額に三度つばを (唾) をつけて

   親のつば、親のつば、親のつば、と唱える (白水村

   古城村北坂梨では同じく暫く唱えて親指につける。この唱えごとをば又、額に、藁のシビを唾で  

   つけて しびれ切れ、しびれ切れと唱える (宮地町植木原)

十四 怪我をした場合、血 (アカブとも言う) が出る時には

   この血を止めよ 血の道の神 父と母とに相違(チガイ)なしと 三度唱えアブラモンケンソアカ

   と言い息をはく (古城村北坂梨)

十五 しやつくりが出た時には、再びこれを繰り辺えさぬために、朝顔,朝顔,朝顔と唱えごとをする。

十六 眼に埃のいった時は、その埃りをとる時の詠みに、

 仏さんの後ろに白手拭冠って盗人が入ったホイホイ(内牧)

 俺りが畑に馬ン子が入ったけ、一寸追して呉れ。を三遍(宮地町植木原) 又、古城村北坂梨では右の目に埃りの入った時は、左の頬(ホーオペタ(フード)を内から三遍ねぶり、左の頬をそうするともつたえる。

十七 群の一人に眼病(ヤンメ)が居るとよく子供は、眼病うつるな、親子じゃないぞと唱えれば、眼病が伝染しない.と伝える (宮地町植木原、古城村北坂梨)

十八 眼の悪い時には各地におまつりしてある、生目八幡様に

景清の輝す(テラス?)生目の水鏡末の世まで雲らざりけり 

の真言を幾度も唱えておまいりする(宮地町 植木原)                                                                                         

又、次の呪文を毎朝三度唱えれば悪質の眼病も治癒すると言う。影清様には、三十二歳の御歳に伊賀殿山田村を御出立遊ばされまして、止まるところは日向国宮崎郡下北方北、アダチサダチの御寺にとどまり遊ばざりまして、六十三歳でおはてなされ、その時の御真言には、御タカセダカカセ、高山ソワカととまうれば眼の病は病ませまいりとの御真言なり。

(注)当阿蘇郡には、生目八幡とて影清を多く斎う詞あり。なお、隣接の宮崎県生目村影清社に、     

当地より遥遥と参詣する者多し。

 

十九 歯のうづく時は、朝顔を洗ってからその儘北に向きついちょう菩薩様、歯がうづきますからどうぞうづきやませて下さい。御願解には、又うづく者に知らせますけん。と言って拝む。

(中通村春口)

 子供の替生歯の時には下の歯ならば屋根の上に捨てて、

 俺歯と雀ン歯とはえくれあいご (宮地町・波野村

 俺歯と雀ン歯と生ふ (又ウール)くらいご (尾ケ石村・内牧町・宮地町)

 又、この次に、俺の方が先にはゆ等の句もつける。(宮地町植木原)若しその歯が上歯ならばゆかの下に捨てて俺歯と鼠ン歯と生ふ (又ウール) くらいご (尾ケ石村・内牧町・宮地町)

 又、先に同じく、この次に俺の方が先にはゆ等の句もつける。(宮地町植木原)

(注) この俗信採取者八木三二氏(大阪府) の郷里、大阪にては、下歯は、便所の屋根の上に、上歯は雨滴石の所に捨てて、ただ、単に早く生えることを祈った。大阪と阿蘇の違いはあっても上の歯は、下に、下の歯は上に捨てるという習わしは実に興味深い。

 

二十一 咽喉(ノド)へ魚の骨を立てた時は

 天竺(テンジク)の七つが池の自鯰鵜の咽喉通る鯛の骨かなと三度唱えてアグラオンケンソアカを唱える (古城村北坂梨)

 うののど うののど うののど と三度唱えると骨が通る (黒川村乙姫)

(注)長野県北安雲郡郷里誌にうののど うののど うののど 三度唱えるとあり。

二十二 手首が痛む時即ちおすち腕が折れたという時には、

 東窓甲佐が滝に立つ夫(男なら女・女なら夫)招きとうても招かれもせず。三度唱える                                        (黒川村坊中)

 東窓甲佐が滝に立つ (男・女)すらうでおれて招くことすれど招かれず。(古城村北坂梨)

二十三 手足に胼胝(マメ)のできた時には、手又は煙管の雁首(雁八と言う)で撫でてやっとことんとんなんまいだ。と三遍唱えてアブラオンケンソアカと唱える。 (古城村北坂梨)                                     

二十四 子供が水瘡にかかった時には、いながわの水せき上げて見れば水量はなしと三度唱えて、アブラウンケンソアカを唱えれば、なおると言う

二十五 妊婦の後産即ち胞衣が下りぬ時には、次の歌よみを三度してからその腹をば撫でまわすと立派に下りる。  天神の梅のこぶくに胞衣かけて吹き来る風は今もいや

二十六、子供が寝入ってから便所へ起きる癖を止めるために囲炉裏(イロリ)の自在鍵の上部の竹に藁をばゆわいてつけて

   どうぞ起きません如ツ。と唱えごとして又、起きまっせんならこれを解きます。と御願立て、

 この悪癖より遠くなるとこれを御願はどきに解くのである (宮地町植木原)

二十七 川へ小便をまり込んだ時の歌詠み

   ガツパ、ガツパ河ざらへちくれ、小便まり込んだア。(宮地町)

   川ん神さん川ん神さん、どうぞ小便ばさせち下はいマツセ (内牧町、下町)

 

 

(ニ) 異変に関するもの.

 

二十八 夜空の飛び去るのは、即ち流れ星のあるのは、死人があるとて一般に忌まれているが見た時にはイロシロ、カミクロ (黒川村坊中)イロシロ、ハナタカ、クロカミ (久木野村イロシロ、カミクロ、ナゴナシ(坂梨)を三度唱えれば、その厄をのがるるという

 

二十九 地震(ナイ)がゆる時はには地が引き割られるき(地表に亀裂が生ずるから)竹山ン中へ逃げ込み、ホイホイ又はホーイホーイと唱え、地震を追いやる(阿蘇郡全般)

 

三十 雷がなる時には、

桑原 桑原 桑原 と唱えれば落ちない (宮地町その他一般)

又、雷が落ちん如ツ各戸に桑畑を持つという。又途中で雷に逢った時には、その背襟に、附近の桑畑の枝をとって、さし、同じく桑原 桑原 桑原と唱えて逃げる。又家中では八大竜王様にお線香を上げて祈る。(古城村北坂梨)

三十一 火事のある時には、神壇におまつりしてある、伊勢大神宮のお守り札を下して

伊勢の神風ホーイホーイと唱えてそれであおぎ風がこちっやん (こちらへ) 例れんごツする。 (宮地町植木原・古城村北坂梨)

三十二 火の用心のうたよみ、弘法大師作という

    霜柱氷のはしりに雪の桁雨の垂木露の葺草と三度唱えアブラオンケンソアカを唱える

                                  (宮地町塩井川)

三十三 火の玉をば見たときには、人の玉か我が玉かは、知らねどもつなぎ止めたる下前柱と唱えて三針縫逆真似(サカマネ)をばする。(宮地町)

三十四 夜中に何かある時、たとえば火事が盗人が入ったりした時にすぐ目覚めるように就寝前次の歌をよみ三度行ない、後にアブラオンケンソアカとつける。古城村北坂梨では親指をこの時三度噛んで唱える。

 寝るぞ、ねだ、頼むぞ垂木、梁柱。(宮地町古屋では、梁屋中又古城村北坂梨ではサス屋中)

 何事あらば起こせ棟の木(宮地町広木)

 寝るぞ、ねだ頼むぞ屋中竹(赤水村永草では、床の意味で巾中竹)

 何事あらばおこせ棟の木(宮地町塩井川)

  又、おそわれて怖れがあったときにもこれをうたう。

 

(ホ) 夢に関するもの

三十五 就寝前に次のうたを三度唱えて床につけば決して夢を見ぬ。

   しやもしや、いねや、さるねや、我床をねるぞねたるぞ、ねたるぞぬるぞ (宮地町広木)

  又同町古屋にては、南無阿弥陀仏と三度唱えればよし。

  寝るぞ猫頼むぞ桷獅子兎 何事あらば起こせかわうそ (黒川村乙姫)

 

三十六 前夜悪しき夢を見た時には、翌朝ゴツト起きに (起きてすぐ) 何も食わぬうちに

よーベの夢を天の獏(バク)に食わする。と三度唱えて、天に唾を三度はけば、その悪難をノガルと言う (宮地町石田)

 今晩の夢は獏に食わする獏に食わする。と三度唱える (古城村北坂梨)

三十七 櫛が落ちて居てこれを拾う時は、元来、投げ捨てた櫛を拾うと縁が切れると言われるが、

悪事災難をのがるべしと唱えて理詰めにて拾う (宮地町石田)

三十八

    失し物をした時には、掌に唾をのせて

スズムシ、スズムシノウナツタガドチイタトゥカ と唱えながらベシャンとその唾をば打ち、その飛んだ方向を見つける。又、道に迷った暗も同様にして定める。

三十九 物失せぬ如ツ

   浮草の一葉なれども磯隠れ心のかけて浮ツ白波と紙に記し金入れ等失容易き物の中に入れて置く(宮地町)

四十

  順天観音を拝する時の唱えは

 ナマサツタナム、サンビヤクサンボタウ、シナンテ、ナタ、オンシャレイシレイ順帝ソアカ 

(宮地町)

 


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