祭りだいこ
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      祭りだいこ            高 橋 佳 也   高橋佳也は満州瓦房店の生れ。満州の旧制鞍山  中学二年生まで在学し、引揚げて阿蘇農から阿蘇  高卒業。しばらく東京にいたこともあるが、二十  九年から九年間坂梨校に勤務した。その後小国黒  川小・市原小を経て、現在は宮地校、童話は作り  そして話す。現に熊日童話の会員で、絵も描く、  字も書く器用さである。四十二才。  兄伯夫も東京にいて作家修業中、時折小説を見か  ける。童話集に「オグーニュ森の笛吹き」がある。   かかげた童話は坂梨校勤務中、三十五年十一月  二日熊日紙上に発表したものである。  

ドンドコドンドコ祭りだいこの音が、秋ばれの空に、高 くひぴきわたりました。  きょうは馬場八幡様のお祭りです。長いおみこし行列 の先頭にたって、いさむ君は胸をはっています。  いさむ君の村では六年生になると、行列の仲間入りを することになっているのです。  いさむ君の持っているのはてんぐの面。やりや弓矢を 持っている人もいます。ドンドコドンドコと、 たいこをうちならしながら行列は進みます。  「いさむ君!」  と、耳のそばであきら君が呼びます。  「君たいこたたいたことある?」  「うん」 調子よく  いさむ君は、学校でたたいたことのある大だいこのこ とを、思いだしながら答えました。  「へえーたいこたたけるの。すごいんだなあ・・・。 うちのおじいさんに聞いたんだけど、たいこたたくのと てもむずかしいんだってね。」  いさむ君はすこしこまってきました。だってお祭りの たいこは、たたいたことなんかなかったからです。でも、  「ほく、たたいたことあるんだ。」  と、またいってしまいました。  「じャあ、たたいてごらんよ。」  「だめだよ。おじさんたちにしかられるよ。」  「あんなこといつて・・・。たたけないもんだから。」  あきら君は「君なんかにたたけるもんか。」 というような顔でいいます。  「ようし、こんどのきゅうけいのとき、ほくがたたいてみせるから・・・・。」  いさむ君は.うまくたたけるかな、たたけなかったら、 あきら君から笑われるだろうな。  そう思うと、さっきの元気はどこへやら、急にしょん ぽりとなってしまいました。  「ここできゆうけい!」  たいこのおじさんが大きな声でさけぴました。さあ、 というみたいにあきら君の目があいずしています。  「おじさん、ちょつとたいこをたたかせて下さい。」  いさむ君はバチをとりあげました。  そして思いきってたたきました。ドコン、ドコン、ド コン、まるで、こわれたたいこみたいな音でした。  「なんだい。そのたたきかたは・・・。」  おじさんが大きな声で笑いながら言いました。あきら 君といさむ君は、顔を見合わせ笑いました。おなかの皮 がよじれるほど笑いました。見上げると秋のまひるの空 に、雲までがにこにこと笑っているのでした。